<研究課題 概要>

研究課題: 冠動脈病変合併リスクの高い川崎病患者に対する免疫グロブリンと
免疫グロブリン・プレドニゾロン初期併用投与の前方視的ランダム化比較試験多施設共同研究

研究の趣旨:

近年川崎病治療におけるステロイドの再評価が検討されてきています。初期治療においてもIVIGにステロイドを併用する治療がrandomized studyで検討され、2006年に井上らは川崎病患者において、IVIG+プレドニゾロン初期併用療法がIVIG単独療法に対して冠動脈病変の抑制、有熱期間の短縮に有効であるという前方視的多施設共同無作為化比較試験の結果を報告しています。一方、NewburgerらはIVIG+メチルプレドニゾロンパルス療法とIVIG療法を比較した二重盲検化前方視的多施設共同無作為比較試験で両群に冠動脈病変の差がないことを報告しています。小林らは、前述のリスクスコアにおいて抵抗例と予測される症例を対象としたIVIG+プレドニゾロン初期併用療法とIVIG単独療法を比較するPROBE法(Prospective Randomized Open-labeled Blinded Endopoint)による無作為非盲検化比較対象試験を行い、IVIG+プレドニゾロン初期併用療法がIVIG単独療法に比して冠動脈病変の発生率の低下、有熱期間の短縮などにおいて有効であることが示しました。

これらの結果の差異については、原因としてステロイドの使用期間の差があげられています。
Newburgerらの検討ではステロイド投与は一日だけであるのに対し、有効性が示唆された井上らの報告ではステロイド投与の中央値が18日であり、小林らの報告でもプロトコールから、ステロイド投与は開始から漸減中止まで最短で20日間にわたります。

しかしながら、こうした長期間のステロイド投与は副作用の出現比率の上昇や入院期間の延長につながることから、治療期間を短縮することができれば、より有用な治療法となりえます。そこで本試験では小林らの治療方法よりもステロイドの漸減を早めるプロトコールでIVIG+ステロイド初期治療の有用性を検討することを目的としました。

研究の目的:

初回IVIG療法に抵抗例と予測される、より重症な川崎病患者において、初回治療としてのIVIG+プレドニゾロン併用療法の安全性と有効性を評価することです。プライマリーエンドポイントとしては試験期間内における冠動脈病変合併頻度であり、セカンダリーエンドポイントは治療開始4週後の冠動脈病変合併頻度、冠動脈径のZ score, 治療抵抗例の頻度、治療開始後解熱するまでの日数、治療開始1週後・2週後のCRP値、有害反応発現頻度を評価することです。

研究の方法:

名古屋大学小児科関連施設において、他の疾患が否定され、除外基準のいずれにも該当しない川崎病患者のうち冠動脈病変合併リスクの高い患者(リスクスコア4点以上)について、本研究参加の同意取得後に研究事務局(名古屋大学小児科)へ登録します。登録症例は、連結可能匿名化後に、事務局からは治療群(免疫グロブリン群または免疫グロブリン・プレドニゾロン併用療法群)の報告がそれぞれの施設よりなされます。

それぞれの群に基づいて各施設で治療を開始し、治療開始後の経過を研究事務局に報告します。

重症川崎病患者に対して試験治療(IVIG+PSL療法)群の冠動脈病変合併頻度が標準治療(IVIG療法)群に対して有意に下回った場合、IVIG+PSL療法をより有用な治療法と判断します。

研究機関:

名古屋大学大学院医学系研究科小児科学講座を中央施設として現時点で下記の共同研究施設と連携して研究を進めています。

共同研究施設(平成27年2月4日時点):社会保険中京病院小児科、名古屋掖済会病院小児科、トヨタ記念病院小児科、岡崎市民病院小児科、市立半田病院小児科、中津川市民病院小児科、名古屋第一赤十字病院小児科、国家公務員共済組合連合会名城病院小児科、厚生連豊田厚生病院小児科、公立陶生病院小児科、藤田保健衛生大学小児科

研究の経過:

参加施設:13施設
現在のRCT登録症例:87症例 (2017年3月8日時点)

名古屋大学・関連施設:登録進行中
名古屋第一赤十字病院:新規協力施設として倫理委員会承認(2016年12月)

【データ解析】
  • 血液検査データはデータセンターに送られているため、研究終了後データセンターにて解析予定。
  • 画像解析についてはプロトコールに従い、研究終了後マスキングされたデータの解析を複数人で行う予定。

【合併症、副作用】
  • 重篤な合併症はこれまで報告されていない。
  • 高コレステロール血症、鼻出血、白血球や好中球の異常値が認められた。原疾患による可能性もあるが、特別な対応は要さなかった。

連絡先:

研究代表者
名古屋大学大学院医学系研究科小児科学 高橋義行
〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞65
TEL: 052-744-2298
FAX: 052-744-2974

研究事務局
名古屋大学大学院医学系研究科小児科学 加藤太一
〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞65
TEL: 052-744-2298
FAX: 052-744-2974
Email: ktaichi@med.nagoya-u.ac.jp (@マークを半角の@に変えて送信してください)

各大学研究担当者
愛知医科大学: 鬼頭敏幸
名古屋市立大学: 犬飼幸子
名古屋大学: 加藤太一
藤田保健衛生大学: 畑忠善
*倫理委員会承認済の施設について記載





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